賢い奴隷ルクマーンの話

『精神的マスナヴィー』1巻
ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー

 

賢い奴隷ルクマーンの話

賢い奴隷ルクマーンの話をしよう。主人には、その他の奴隷達と比べてルクマーンは劣って見えた。主人は外側だけを見ていたのである。奴隷達は、ルクマーンを虫のように蔑んだ。彼は夜のような男だった。夜のように暗い外貌と、夜のように深い思考を持っていた。

主人はしばしば、果樹園に奴隷を行かせた。奴隷が持ち帰る果物が、彼の最大の楽しみだった。ところがある日、欲にかられた奴隷達は収穫した果物に手を出し、大喜びで食べつくしてしまった。そして彼らの主人に、ルクマーンが食べたのだと告げた。これを聞いて、主人はルクマーンを苦々しく思った。

何故そのようなことをしたのかと尋ねられ、ルクマーンは悲しく思いつつも、異議を申し出るためにその唇を開いた。「父とも仰ぐ方よ」、ルクマーンは言った。「いずれが不義を働いた奴隷であるか、神の御目にも明白にはされておりません。貴きわが主人よ、私達全員をお調べ下さい。

「湯を沸かして私達にたっぷり飲ませ、それから私達を野駆けにお連れ下さい、あなたは馬で、私達は徒歩で。その上で、誰が悪事を働いたのかを確かめて下さい - 秘密は、これを隠したもう御方の手により暴かれることでしょう!」。そこで主人は奴隷達に熱い湯を与えた。彼らは怯えつつこれを飲んだ。

それから彼らは野を走り、麦畑の中へと逃げ込んだ。息せき切って走った彼らは、しゃがみ込んで嘔吐した。先ほど飲んだばかりの熱い湯が、盗み食いした果物を、彼らの体内から連れ戻し吐きださせた。ルクマーンも、へその下からひっくり返したように吐いたが、出てきたのは何の混じりけもない湯ばかりだった。

賢いルクマーンはこうして真実を明らかにした。しかし彼はただのヒトだ、これが真実在たる神ならば如何ばかりであろうか!「秘めごとが試練にかけられる日(コーラン86章9節)」、あなた方が隠し持っていた何かが、あなた方自身の中から現れる - 知られることを望みもしなかった何かが。

「腸も裂ける熱湯を飲まされて(コーラン47章15節)」、今の今まで覆い隠していたヴェイルが引き裂かれる。劫火が、信じぬ者への責め苦となるのは何故か。炎こそ石を試すのには丁度良いからだ -

石のように凝り固まった我らが友の心に向かって、私達は幾度となく繰り返し語りかけた。しかしどれほど穏やかに語りかけようとも、彼らは助言を聞き入れようとはしなかった。悪い傷には薬が必要だ、それも強烈な薬が。「悪い女は悪い男に、悪い男は悪い女に(コーラン24章26節)」とも言うではないか。ロバの頭には犬の牙、醜いものには醜いものがふさわしいということだろう。

あなた方にも好きな何か、愛する誰かがあるならば、行け、十分にのめり込め - 姿かたちまで、すっかりそれそのものになりきるほどに。もしも光を欲するならば、まずはあなた自身を光を受け取るのにふさわしく整えよ。もしも(神から)遠ざかりたいならば、どこへでも行け、うぬぼれた自分を連れて。

そしてもしもあなたが、荒れ果てた牢獄の中でひたすらに解放を望み、出口を探し求めているのならば、 - 「伏し拝んで、主に近づけ(コーラン96章19節)」、愛する者から決して目を逸らすな。