神意の旗持つ者たちへ

『ルーミー詩撰』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー

神意の旗持つ者たちへ 1

 

赦す御方たる神は、その永遠のご意志とご命令を、
相反する何ものかをあらわすことにより明らかにしたもう。
番いなくして示されるものは何ひとつ無く、
そして比類なき王に並ぶものは何ひとつ無い。2

御方は地上の代理者をつくりたまい、
御方の一性を映し出す鏡のごとき心を与えたもう。
鏡には無限の透明度を授けたまい、
そこに漆黒の鏡裏を施したもう。

御方は二つの旗をつくりたもう、
ひとつは純白、もうひとつは暗黒。
ひとつはアダムの有、
もうひとつはイブリースの有。

強いふたつの軍旗の下に、戦闘と争乱があり、
やがて定められた通りの結末を迎える。
次の時代においてはアベルが現われ、
純粋なる彼の光の、相反者となったのはカイン。

時代から時代へ、世代から世代へ、
対立において掲げられるのはいつも同じこの旗、
時は流れ、ついにムハンマドが到来し、
横逆の軍の将アブー・ジャフルに立ち向かう。
 


1. 『精神的マスナヴィー』6-2151.

2. 世界における神の顕現は、相反するものどうしの出現をもたらす。時代を重ねて連綿と続く支配権を巡る争いは、一方が神の美を、またもう一方が災厄の性質を持つ者として表現され擬人化されるが、神が<一>であるように、彼らも根源的には<一>である。