存在の重荷

『ルーミー詩撰』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー

存在の重荷 1

 

わたしの中で潮が満ちては干き 浮いては沈む
栄光のおんみよ、汝のなせる業なくば
わが海も凪いでおられたものを

汝、我が身に災厄をもたらすその同じ源もて
今は我が身に安寧をもたらしたまえ!

苦悩もて男を女より弱き者とする汝よ
道ならば唯ひとつのみ開示せよ
十もの道を繰り返し歩ませたもうな!

わたしはやつれた駱駝のよう
自由意志の鞍は背に食い込んで痣をつくり
下げられた荷籠のせいで思うように進めない

不釣り合いなこの重荷を降ろさせてくれ
汝の恩寵の草原をわたしに見せてくれ

幾百幾千の歳月を わたしは無意識を浮遊して過した
まるで大気を漂う微粒子のように

たとえあの時 あの状態を忘れたとしても
眠りの中でならわたしは思い出す あの旅の記憶を

夜が訪れれば 四本の腕もてわたしを縛るこの十字架から2
わたしは逃げてゆく 広大なる牧草地へと

失われしあの日々の乳を おお 主よ
眠りの糧からわたしは啜るのだ

やがて死に至るあらゆる生けるものたちが
かつていたところ あの無意識の旅の記憶を探し求めて
自由意志からの逃走を試み 存在からの逃亡を試みる
ほんの束の間でも自意識から逃れようと
葡萄酒の酩酊と恥辱に自らを投じる

何故なら皆知っているのだ 存在とは罠であることを
自由意志も思考も記憶も 地獄に他ならぬことを

 


1. 『精神的マスナヴィー』6-210.

2. [神の美について] 参照。「四本の腕もつ十字架」とは、地上の四大元素を、楽園を追放された魂を責め苛む牢獄にたとえた表現である。