『スーフィーの寓話』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー
「どろぼう太鼓」1
ちょっとした譬え話と思って聴いておくれ。
ある夜のこと。悪いわるい泥棒が、忍び込もうと壁をごりごりとほじくっていた。病み上がりで半分だけ眠っていた男が、何かが聞こえてきたので半分だけ目を覚ました。
そこで男は屋根によじのぼり、ひょいと頭をぶら下げて、 - 「だんな、だんな。どうかしましたか。困ったことでなければ良いんですが。こんな夜中に、一体ここで何をしてるんですか。あなた、一体どこの誰ですか?」。
「これはこれは、ご主人様。私は太鼓叩きです」、泥棒は言った。「それはそれは。で、ここで何をしてるんですか」。「太鼓を叩いているところです」。そこで病み上がりの男は言った、「太鼓が叩けるだなんて素晴らしい。ひとつ音色を聞かせて下さいよ」。
泥棒は答えた、「私の太鼓は特別でして。明日の朝になれば聞こえますよ、こんな音色です、 - 『ああ、ああ!』『困った、困った!』」。
*1 3巻2799行目より。