『スーフィーの寓話』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー
「未来が見える金細工師」1
ある男が、金細工師の店へやって来てこう言った。「秤を貸しておくれ、金を量りたいのだ」。金細工師が答えて言うには、「お断りだね。うちに篩(ふるい)はないんだよ」。「いやいや、秤を貸しておくれと言っているんだよ」、男は言った。「つまらない冗談はやめておくれ、時間の無駄だよ」。
「あいにく、うちには箒(ほうき)もないんだ」、金細工師は言った。男は言った。「わかった、わかった。もう十分だ。ふざけていないで、いいから秤を出してくれ。あんた、耳は確かかい。つまらないでまかせばかり言うものじゃないよ」。
金細工師は答えた。「ちゃんと話は聞いていたさ、耳は悪くないのでね。そんなことより、あんたこそ私の話をちゃんと聞いていたのかい。ふざけていると思われちゃ困るよ。
あんたが秤を使いたがっているのも聞こえているよ。だけど爺さん、あんたはさっきからずっとよろよろと震えているじゃないか。手もぶるぶると震えているし、背中もすっかり曲がっているときた。おまけにあんたが持っているのは、金は金でも細かい削りくずだ。
震えた手で秤を使えば、あんたは金の削りくずをこぼすだろう。そうしたらあんたは『箒を貸しておくれ、埃ごと掃いて集めるから』と言うだろう。そうやって掃いて集めたら、今度は『篩を貸しておくれ、金と埃をふるい分けるから』と言うだろう。
この通り、始まりから終わりまで、私にはすっかり見えていたというわけさ。さあ、分かったならどこか他所の店に行っておくれ。さようなら、ごきげんよう!」。
*1 3巻1624行目より。