『スーフィーの寓話』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー
「『もしも』の家」1
住む家のないある男が、必死になって家を探していた。
友人の一人が来いというので行ってみると、そこは荒れ果てたあばら屋だった。
友人は言った、「もしもこの家に屋根さえあれば、きみが住むのに十分なのだが。もしもきみがここに住めるなら、きみとぼくとはご近所同士になれるのだが。もしもこの家にもう一部屋あれば、きみの家族も一緒に住めるのだが」。
「ああ、全くきみの言う通りだ」、男は答えた。「友人とご近所同士になれたなら、そりゃあ素敵だろうよ。しかし、ねえきみ、わが心の友よ。『もしも』の家に、人が住むことは出来ないよ」。
*1 2巻739行目より。