『スーフィーの寓話』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー
「感じることと、考えること」1
誰かがザイド2の頸を叩いた。叩かれたザイドも、やり返そうとばかりに拳を構えて振り返った。
「待てまて」、ザイドを叩いた者は言った。「質問したいことがある。まずは私の問いに答えてくれ、私を叩き返すのはその後にしてくれ。
私はおまえの頸を叩いた。その時、ぴしゃりと音がした。さて、ここで質問だ。その音は私の手からくるものか?それとも、おまえの頸からくるものか? - どうだ、なかなか良い質問だろう?仲良く一緒に考えてみようじゃないか」。
ザイドは答えた。「叩かれた痛みのせいで、考える暇も無かった。調べる暇だってあるもんか。問いの答えは、痛い思いをしていないおまえが考えろ。痛みのまっただ中にいる者は、痛みを感じるだけで精一杯だ」。
*1 3巻1380行目より。同巻には、スコラ神学と対峙する直観的・情感的・経験的神秘主義の態度を例示するものとして二つの寓話が並べて収録されており、これはそのうち第二の寓話に当たる。
第一の寓話には、これから結婚しようという初老の男性が登場する。少しでも若く見せようと、彼は床屋へ行きあごひげに混じった白髪を抜いてくれと注文する。すると床屋はあごひげを全部そり落とし、それを彼の前に置いて言う、「自分で選り分けてくれ。おれには他にもやらなちゃいけないだいじな仕事がある」。