『ルーミー詩撰』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー
我欲について 1
ナフスこそは、全ての偶像の根源だ。
物質を用いて造られた偶像が蛇なら、
観念の偶像は目に見えぬ巨大な竜だ。
偶像を破壊するのは簡単だ、単純過ぎておはなしにならない。
だがナフスを、偶像と同じ程度に考えるのは阿呆のする事だ。
友よ、ナフスの姿を知りたいのならば、その時は書物を読め、
地獄と、地獄に備わる七つの門について解き明かした書物を。2
今この瞬間にも、ナフスによる欺瞞の行為が繰り広げられている。
そのひとつひとつに、百人のファラオと追従者たちが溺れている。
1. 『精神的マスナヴィー』1-772.
2. ナフス/自我( nafs )とは端的に言えば地獄そのもの、あるいは地獄の一部そのものである。本質的には常に悪魔に属する。地獄とは罪を犯すように命ずる自我( nafs-i ammarah )の具現であり、それは実に主観的である。「地獄に備わる七つの門」すなわち辺土とは、破滅( muhlikat )をもたらすとされる七つの悪癖を象徴している。