知は力なり

『ルーミー詩撰』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー

知は力なり 1

 

知識こそは、ソロモンの王国へ通ずる鍵である。
世界は肉体であり、知識はその精神である。2
世界という器を、知識という水が満たしている。

知識の探求とは、何たる美徳であろうか。
この美徳を捨て去らぬ限り、
海に棲むものも山に棲むものも地に棲むものも、
探求者の前には全て無力となる。

知識ある者の前に、獅子も豹も畏れて伏せる。
大河をわがものとする鰐が震える。
妖精も悪魔も、知識ある者を見れば怯えて、
それぞれの隠れ処へと逃げ去って行く。

世界には、未だ明かされていない数多くの知識がある。
秘された知識は、敵ともなれば味方ともなる。
隠されたものの中には、良いものもあれば悪いものもある。
隠されたそれらは、絶え間なく心めがけて吐息を吹きかける。3
天使の霊感と悪魔の誘惑とが、ありとあらゆる方角からやって来る。

知識を体得する者とは、注意深く学び続ける者である。
感覚の全てを研ぎ澄ませて待て。
それは肉体の感覚を超えたところからやって来る。
捨て去るべきものを捨て去り、選び取るべきものを選び取れる、
もうひとつの感覚が育つのを、用心深く待て。

 


1. 『精神的マスナヴィー』1-1030.

2. 世界とは、その存在理由に被せられたヴェイルである。世界の本質はそれを支配する神的知識にある。肉体を支配し、動かし、生かしているのが実は精神であるのと同様である。この知識に達する力を、人間は潜在的に持っているのである。ソロモン王はジン(妖魔)、獣、鳥たちを自在に操ったが、彼が保持したとされる力の指輪とは、知識と、知識を学び取る人間の能力の象徴であると言える。

3. モスレムの信仰に従えば、心( qalb )とは常に悪魔と天使とがせめぎ合う眼には見えない戦場である。