「冥土の道に王はなし」

『ルーミー詩撰』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー

「冥土の道に王はなし」 1

 

目隠しをされた旅人たち 正しき者も、悪しき者も
神はひとしく鎖につなぎ 御前へと引きずり出したもう
誰もが不承不承に この道を引きずられてゆく
神のみわざの 不思議を知り抜いた者を除いては

「来たれ、好むと好まざるとを問わず」
−− これは盲信の追従者たちに宛てられた命令
「来たれ、喜びと共に」
−− これは真実もてかたどり作られた人へのみ言葉2

前者は赤ん坊のよう 乳欲しさに乳母を恋しがる
後者は ヴェイルに隔てられた者の美に心奪われている

「赤ん坊」は 彼女の美について何ひとつ知らない
乳の他には 何ひとつ欲しがろうともしない
乳母を真に愛する者は淡々としたもので 乳にさえ興味がない
ただ一途に 清らかな崇敬の思いを捧げるのみ

何かしらを欲して神を求める者は 神の恩寵の分け前に預かるだろう
神のみを欲して神を愛する者は 別離の他に何ひとつ恐れることもないだろう

探求も憧憬も ふたつながら同じひとつの彼方より来る
心は それを奪う御方に奪われるように創られている

 


1. 『精神的マスナヴィー』3-4581.

2. コーラン41章10節、[天上の画家]なども参照。

41-9. 言ってやれ、「おまえたちは、二日間で大地を創造したもうた神に背を向け、このお方に対等者を併置するのか。万有の主であらせられるのに。
41-10. 大地の上に不動の山々を置かれ、祝福され、四日間で、求める者に応じて等しく大地の糧(かて)をお計りになられた。
41-11. ついで、まだ煙であった天に昇りたもうた。天と地にむかって、『好むと好まざるとにかかわらず、双方とも来るがよい』と言いたもうた。天と地は言った、『喜んで参上いたします』
41-12. そこで神は、これらを二日で七つの天とされ、それぞれの天にその使命を啓示したもうた。そして、もっとも下層の天を照明で飾り、守りたもうた。これこそ力強いお方、よく知りたもうお方、神の定めである」