『終訳聖書』。多くは語りませんが、まあ若干は。第7章KORANICLESを以下に。
スーラ1
1. あなたがたに言っておく。わたしと預言者ムハンマドとのかかわりについて、ムハンマドに下した啓示コーランについて、偉大なるイスラム教について。それはわたしが三番目に作った宗教である。
2. そう、イスラム教について。
3. イスラム。うむ、イスラム。そう、イスラム。
4. 信者が15億超えてるって知ってた?
5. 超えてるんだよ。うん。
6. メジャーな分派にスンナ派とシーア派があるって知ってた?
7. ……(親指をこすりながらしばしの沈黙)
8. あなたがたに言っておく。この章を書くにあたって、わたしは大いなる不安を感じている。
9. もちろん、わたしは神である。アッラーである。全知全能である。だがそのわたしですら、近頃はイスラムについて何ごとか言うのに細心の注意を払わざるをえない。
10. わたしはときどき、天から地を見下ろしてあれは出来のいいモスクだ、とかあのイマムは見所がある、とか口にする。
11. するとそれを耳にしたヘブライの族長たちやキリストの殉教者たちが互いに目配せをしてそわそわし始める。
12. するとそれを敏感に察知した品行方正なムスリムたちも落ち着きをなくしてそわそわし始める。
13. 緊張感が行き渡ったところで誰かが、だいたいの場合ヤコブなんだが、咳払いするふりをして「アルカイダ」などと小声で言う。
14. たちまちムスリムが「なんて言った?!」とかみつく。「『アルカイダ』とはどういうつもりだ。」ヤコブが違うちがう、おれはただ「オレアイダ」と言ったんだ、とごまかす。誰が冷凍ポテトのはなしをしているんだ。あいつの空気の読めなさ加減はほんものだ。
15. 放っておけば、雰囲気はとげとげしさを増すばかり。その場に居合わせた全員のたましいをいやすのに、わたしは天の聖歌隊を召喚せざるを得なくなる。彼ら非宗派的混成合唱団が奏でる”middle-of-the-road”なポップミュージックなら間違いなく万人受けするからな。
16. さて、そういうわけだから、まずあなた方にこれを言っておく。このコーラニクルにも、もちろん本書全体のどの部分にも、なんぴとたりとも見出し得ないものについてだ。
17. 汝、この書物のいかなる箇所にも『悪魔の詩』を見出す勿れ。
18. 汝、この書物のいかなる箇所にも反ムスリム的プロパガンダを見出す勿れ。
19. 汝、この書物のいかなる箇所にも豚肉由来製品を見出す勿れ。
20. それより何より、汝、この書物のいかなる箇所にもデンマーク人絵描きの預言者ムハンマド風刺画を見出す勿れ。
21. この点についてはいくら強調しても強調し足りない。
22. もちろん、この書物のどこをどう探そうがムハンマドの視覚的表現はありません。以上!
23. 漫画はなし。挿絵もなし。絵画なし、エッチングなし、リトグラフなし、写真なし、銅版写真なし、クリップアートも影絵も全部なし。
24. 一番近いものとしては真ん中にはさまっている12ページだが、これはあくまでも純粋に言語表現の可能性を追求したのであって、断じて異端的視覚表現に非ず。
25. これほどまでに念押しに念押しを重ねそれでもなおわたしは本書の版元との間に交わした約束を今ここで果たさねばならない。すなわち、
26. 「わたしこと神(以下甲)は、本書におけるイスラムに関連する一部の内容が原因で生じるすべての暴動、ファトワ、ジハードから版元サイモン&シュスター(以下乙)を免責するものとする。
27. なお、加えて甲は本書に含まれるあらゆる内容について、あらゆる宗教の一部の信者が任意の激怒を抱いた場合はこれを補償するものとする。
28. 甲はエホバであり、神であり、父であり、アッラーである。本書の全ページに含まれる永遠の真理についての責は、唯一、甲のみが負うものとする。」
29. (その上で、地上における救済手段を恃みに名誉毀損でわたしを訴えるのはあなたがたの自由である。あなたがたのうち誰かわたしに対する召喚状を裁判所から取り寄せてみようという者はいないのか。わたしは本当に期待している。)
スーラ2
1. それはそれとして、さてイスラム教についてだが。ほとんど何も言うべきことがない。その聖典にもこれといった目新しい物語は盛り込んでいないし、わたしが作ったその他ふたつの宗教に比べれば、語るのも基本的にはるかに簡単だ。
2. 7世紀の初めまでには、キリスト教はすっかり完成されていた。とは言うもののあの宗教においては崇敬も賞賛も栄光も、そのほとんどはイエスに対して捧げられている。
3. 息子のせいで、わたしは自分の影が薄くなったような気がしていた。ここはわたしが創ったわたしの宇宙だというのに、まるで自分が二番めにいいやつになったかのような気分にさせられるところまできていた。
4. そしてあなたがたも知っての通り、わたしは嫉妬深い神である。
5. だがこれだけははっきり言っておく。わたしは、せがれの成功なんざどうでもいい。
6. ピエタだのボブルヘッド人形だの、ああいうのは今までもこれからも全部せがれ本人の手柄ってことにしておけばいい。
7. そういうわけだから、わたしはイエスの宗教を乗っ取るよりも、むしろ新しく宗教を創設することに決めたのだ。70世代も後になってトニー・ダンザと同じジレンマに陥らずに済むような、誰がボスなのか疑う余地もないようなやつをだ。
8. この新たな信仰を育む倫理的な土壌として、世界のどの文化が最もふさわしく最も役に立つか、わたしはじっくりと長い時間をかけて思いめぐらせた。
9. マヤ人たちはかなりいい線をいっていた。彼らの情熱にはどれだけつきあっても飽きなかった。
10. だが最終的には、わたしはアラビア人にしようと決めた。異教徒どものうち、真の唯一神を受け入れる準備が最も整っていたのが彼らだったからだ。
11. それにわたしは彼らが知らないことも知っていた。彼らが住まう果てしない砂漠の下にものすごく大量に埋まっている、例の黒いあれについてだ。
12. いつかこれが発見されたとき、その上に住まう人々がキリスト教徒やユダヤ教徒と同じ神を崇めていれば、同じ信者のよしみで互いにいがみ合うこともなく穏便に平和に分かち合えるだろうとわたしは考えた。
13. (何度でも言っておく。わたしは完璧ではない。)
14. そこでわたしは今一度、準備チームを現地に派遣し預言者にふさわしい人物を探させた。今回は、実際のリアルな人間にわたしの言葉を広めさせたかった。前回の件以来、わたしのもとにはネポティズムに対する苦情が多数寄せられていたからな。
15. 正しい候補者を絞り込むのにさほど時間はかからなかった。われわれは満場一致でムハンマドに決めた。勤勉で信心深い愛国的指導者だ。
16. アッラーのために生まれたほんもののメッカっ子だ。
17. ムハンマドは単なる預言者ではない。ザ・預言者だ。わたしが共に働いた者の中ではまちがいなく一番優秀だ。
18. ハンサムで賢くて機敏で、カリスマ的で思慮深く雄弁で。誰もがそうと考えるであろう、世界宗教の創始者のあるべき姿そのものだった。
19. だが弱点がひとつだけあった。それは彼の出身地がメッカだということだ。今となってはメッカといえばヘイヴンと同義語だが、当時のメッカは現代のアメリカ人が言うところのピオリアみたいな土地として知られていた。
20. 本当に、ベドウィンの商人たちの間でこんなふうに言われない日はなかった –– 「この絹地も甘松の香油もイエメンの港でならもちろんひっぱりだこさ、あそこは世界の最先端だからね。でもメッカでうまく行くかい?」。
21. それでもわたしは彼を預言者として雇いたかった。そこでわたしはある晩、彼が瞑想し慣れた洞窟へ大天使ガブリエルを遣わした。
22. だが夜が明けるとムハンマドは逃げた。新たな役割を担うことをためらったのだ。
23. 最初はわたしも特に驚きはしなかった。それが預言に招かれた者が最初に示す、ごく典型的な反応であることを長年の経験から知っていたからだ。
24. (預言に招かれた者の示す反応には、古典的な五段階というものがある。1. 抵抗。2. 怒り出す。3. 妄想型統合失調症。4. クジラに飲まれる。5. ようやく観念して受け入れる。)
スーラ3
1. ところがそれから三年間、ムハンマドは気の進まないそぶりを見せ続けた。消極的な預言者などわたしにとってはほとんど使いものにならない。彼ときたら選挙戦の激励演説のはしばしで「かもしれない」だの「じゃないかもしれない」だのと口走ってしまう応援弁士のようだった。
2. とうとう、わたしはもう一度ガブリエルに彼の洞窟を訪問させた。今回はノーウィング、つまりノータイノージャケットのカジュアルな服装で送り出した。
3. 彼らはしばし軽い調子の会話を交わした。家族や商売、政治について、特にサーサーン朝帝国とそれを支配する悪しき下衆野郎どもについて。
4. ようやく核心に触れたのはムハンマドの方だった。「ガブリエル。アッラーが彼のメッセージを人々と共有するのにぼくを選んでくれたことについては本当におそれ多いと思ってるよ。でも頼む、誰か他の預言者を見つけるようにきみから言ってくれないか。
5. 誰かもっと見た目のいい人物を……恐ろしく不細工な……異様で不快な……見るのも嫌になるようなんじゃないやつを!」
6. そこでガブリエルはムハンマドを見たが、ハンサムで均整の取れた体つきの、つまり魅力的な男だった。そこで彼は言った、「ムハンマド。きみが何を言っているのかぼくにはさっぱり分からない。」
7. 「ぼくをばかにするな!」、ムハンマドは答えた。「きみには見えないのか、おそろしく気味の悪いこの傷のせいでエレファント・マンみたいになったこのぼくの姿が!」
8. そう言って、彼はあごの右側を指さした。そこにはかすかに変色した生まれつきのほくろがあった。大きさは1インチくらいで、短い縮れ毛が2本はえていた。
9. 言うほどのことではなかった。本当にどうでも良かった。
10. くっだらない。
11. 「ムハンマド、」ガブリエルは言った、「そんなもの何でもないよ、ただの小さなほくろじゃないか。すごく近くで見るのでもないかぎり目立つものでもないし、実際ぼくは全く気がつかなかった。」
12. 「それはきみが天使だからさ!」、ムハンマドはそう叫ぶと、顔を覆って悶え泣いた。「きみたちは物事の内奥しか見ないから、外面上のことはスルーできてしまうんだ。
13. でもぼくと同じ仲間の人間たちの前にアッラーの預言者として立つなんてできないよ。こんな、こんな……醜くて穢らわしい奇形を人目にさらすなんて……こんなグロテスクな悪夢を見せられたら、人はみな恐怖にうめき、嫌悪して叫び声を上げずにはいられないだろう……。」
14. その後も彼はくどくどと、この小さなほくろがいかに巨大な化け物であるかを確信込めて語り続けた。
15. だが辛抱強いガブリエルもていねいに道理を説いて聞かせた。預言者の身体的異形症にかかる議論は二時間に及び、
16. 最後にようやくムハンマドが折れた。彼は言った、「きみには負けたよ。これ以上はもう無理だ。ガブリエル、きみはアッラーの大天使なんだから、命令されればぼくは従わないわけにはいかない。
17. でもそのかわり、これだけは頼む。この先永遠に、どれほど多くの人がぼくについて語ろうが、どれほど多くの人がぼくを讃えようが、どれほど多くの人が、ぼくが伝える教えを通じてアッラーの栄光を知ることになろうが、
18. 絵画は禁止だ。
19. ぼくは本気だぞ。
20. 絵画は……禁止だ。」
21. ガブリエルはため息をつき、言った。「いいだろう。」
スーラ4
1. こうしてムハンマドはわたしの真理について伝導を開始した。彼が説教を始めたという報せはまたたく間に広まり、大いに盛り上がった。あたかも人気上昇中のツイッターアカウントが開花したかのように、知恵の言葉の数々はたちまちメッカ中にRTされた。これらの教えが、やがてコーランとなった。
2. さてわが息子の不死から6世紀、わたしはより滅私奉公的な、思いやりにあふれるアプローチの中に神としての幸福を見出そうと試みた。しかしそれは実に難しいことが分かった。
3. そこでわたしはコーランを、敢えてオールド・スクール・スタイルの旧約ボイスで執筆することにした。
4. 賞賛はあくまでも大仰に。断罪はあくまでもおどろおどろしく。楽園はあくまでも楽園らしく。プロパガンダには怒りを込めて。不信者への厳しい懲罰を繰り返し挿入して脅迫することも忘れずに。
5. 言ってみればターバンを巻いた律法だ。
6. コーランという書物はこれまでに記されたどのような書物よりも、読む者は本当に、本当によく読むし、また読まない者は本当に、本当に読まない。
7. 汝が前者のグループに属するなら、この書物の三大メインテーマを知っているだろう。それ以上でも以下でもないテーマとはすなわち、
8. (1)わたしは素晴らしい。
9. (2)同意する?よろしい。
10. (3)同意しない?あまり、よろしくない。
11. しかし汝が後者のグループに属するなら、ここでは一読を奨励する他に言うことはない。
12. 言語的課題が立ちはだかるのは承知の上で、敢えて勧める。つまりだ。コーランはほぼすべての人類の言語に翻訳されてはいるものの、オリジナルのアラビア語以外で読んだり復唱したりしても、多くの微妙な意味は失われてしまうのだ。
13. たとえば「御光の章」、第24スーラの第35アーヤの言葉は、アラビア語では以下のようにアッラーについての神秘的なビジョンを言い表している。
14. 「かれの光をたとえれば、ともし火のある壁龕のようである。そのともし火は水晶の中にあり、水晶はさながらきらめく星のようである。」
15. これが字義通りの意味である。だがこれと同じアーヤが、最も一般的な英語訳でも以下のように読まれている。
16. 「われわれはおまえたちの教会を燃やし、おまえたちのライフスタイルを破壊し、おまえたちのマヨネーズをすべてタヒニと入れ替えてやる。」
17. 汝でも、ニュアンスの違いが分かるだろう。
18. だがそれでもわたしは、イスラムとのより良い関係構築を模索する全ての非ムスリムにはコーランを読むように勧める。
19. 少なくとも、イスラムとのより良い関係構築を模索する全ての非ムスリムにはグアンタナモのムスリム収容者の目の前でコーランをトイレに流したりしないよう勧める。
20. なぜなら異宗教間における寛容性とかいった方面では、コーランを読んだことのある非ムスリムと読んだことのない非ムスリムの違いなど、コーランを読んだことのない非ムスリムとグアンタナモのムスリム収容者の目の前でコーランをトイレに流したことのある非ムスリムの違いに比べれば全く大したことではないからだ。
21. 何を言わんとしているかというと、つまりこういうことだ。この先もしも汝に、コーランを初めて手に取る機会が訪れたなら、(a)読んでみる (b)グアンタナモのムスリム収容者の目の前でコーランをトイレに流してみる のうち、どちらにするか迷うことなく、
22. (a)を選べ。
スーラ5
1. 西暦622年、ムハンマドと彼の仲間たちはメッカからメディナへ避難した。これがイスラム暦の紀元となった。
2. (わたしの三大宗教がそれぞれ三種類の異なるカレンダーを使用しているせいで、わたしまで非常に混乱させられている点については苦言を呈しておこう。本書の出版年ひとつ取っても、ユダヤ教徒たちには5771年、クリスチャンたちには2011年、ムスリムたちには1432年と記してやらねばならない。
3. そうだ。知っているとも。ムスリムは太陰暦を使用する。クリスチャンは太陽暦だ。ユダヤ教徒は太陰太陽暦で、これは両方をうまくカバーしている。例によって例のごとく抜け目がないな。
4. だが年代順の、時系列での話なら、わたしはえこひいきはしない。汝の小切手に印刷された数字が何番だろうとわたしには関係がない。仕事上では、わたしは時間は守る。だが同時にわたしは永遠に住まう者である。
5. もしもわたしが汝なら –– もちろん、わたしは汝ではない。わたしこと神よ、感謝します –– カレンダーを同期させる。そうすれば汝ら全員が文字通りsame pageに、ひとつにまとまるかもしれない。
6. 全く宗教的な意味を持ち込むことなく誰もが同意する日を1日選んで第1年めの最初の日とし、以降はロシュハシャナもニューイヤーもヒジュラも毎年同じ日に祝うようにすれば良い。
7. そうそう、廃れてしまわないうちに中国の旧正月もぶち込んでおけ。どの干支でも、好きな動物を一番最初に持ってくるがいい。)
8. その10年後に死ぬまでの間、ムハンマドは多くの戦いを勝ち、多くの改宗者を得、啓示を広めた。また男やもめになってからは12人以上の妻をめとった。
9. これらの縁組のうち何割かは政略的なものであった。また何割かは未亡人たちへの同情的援助であった。残りの何割かは経済的な理由だ。家庭用品を揃えるのに1ダース単位なら卸価格で購入できて安上がりである。
10. しかし彼にとってはアーイシャとの結婚ほど幸福なものはなかった。彼が最も愛した妻であり「信者たちの母」と呼ばれ、彼が啓示を受けていた間じゅう最も長い年月を共に過ごした。彼と結婚したとき彼女は6歳だった。彼女の父はスンニ派信者の最初のカリフとなった。
11. いずれにせよ、これらは –– うん?
12. ああ、「彼女の父はスンニ派信者の最初のカリフとなった」、と言ったのだ。
13. とにかく、それらは ––
14. なに?何だって?その前に何と言ったかって?
15. ああ。あー、……「彼と結婚したとき彼女は6歳だった」と言いましたが、それが何か。
16. 彼らが何をしたって?! 違う!
17. そんなおぞましいことを言う者があるか!
18. 本当に、それこそは汝の無知のあらわれである。
19. 否。彼らは彼女が9歳になるまで待った。さて、はなしの続きを ––
20. 汝、「ペドフィリア」とはどういう意味か。不適切なことは何ひとつ無かったぞ!
21. 当時のベドウィンたちにとり、これはごく標準的な慣習だったのだ。汝の義憤なぞわたしの知ったことか、彼らの文化とは何の関わりもないくせに。それは完全に完璧に、公正明大なことだったのだ。
22. それに、彼女はどう見ても11歳以下には見えなかったぞ。本当だ。わたしを信じろ。
スーラ6
1. イスラムの成功はあっという間の、かつ大規模なものだった。だがわたしが最も誇らしく思っているのは評判よりも、その実践と信条である。
2. 何もこれはその他の宗教よりもイスラムが正しいと言っているのではない。単にわたしの、ビジネス上の好みとしてそう言っているだけだ。
3. たとえばキリスト教はウォルマートに似ている。それは誰にも止められない巨獣だ。足場を得るためならひっかかるものは何でも踏みつぶす。常連客には低価格でもって大いなる救済を提供するが、ひしめく従業員たちはどう見ても禁欲僧にしか見えない。
4. そしてユダヤ教はブロックバスター・ビデオだ。過ぎ去った時代を今に伝えるきしんで古い建物。こういう業態に生き残りの余地があると考える者はほとんどいない。こんなサービスを利用するよう強要されれば、他人の目が気になって仕方がなくなる。自分でも冗談でやってるのか何なのか良く分からなくなってくる。
5. その点、イスラムはまるでスターバックスだ。ストレートでただ前進あるのみ。その姿勢は不変である。メニューと言ってもテーマは統一されており、バリエーションが二つみっつあるだけ。そこに集う群衆はこぞってこの組織に自分たちの生活の大半を捧げる。
6. この信仰の特徴はその経営理念 、すなわちイスラムの五行に見出せる。
7. 第一の行はその信条。「アッラーの他に神はなし。ムハンマドはかれの使徒である。」汝がこれまで耳にしたスローガンの中でもかなりキャッチーだろう。
8. 第二の行は礼拝。一日5回、経営本部のある本社社屋に向ってCEOに対する絶対服従の意を示すこと。こういう明確な指示があればこそ、24時間につき75億の崇拝を生産できる。これは非常に感銘的な数字だ。
9. 第三の行は断食。ラマダン月の夜明けから夕暮れまでの間、ムスリムはそろって断食しなくてはいけない。チーム育成にはもってこいだな。
10. 第四の行は喜捨。すべてのムスリムは貧困者や低所得層の救済に収入の2.5%を充てるのが必須とされている。これよりも低い法人税率がどこにあるか、汝、探せるものなら探してみろ。2.5%だぞ。デラウェアが社会主義国家に見えてくる。 http://goo.gl/4lsu3w
11. そして最後の行にして最大の行、ハッジ。すべてのムスリムは一生に一度はメッカ巡礼をしないといけない。従業員へのリトリートとしては最強だ。
12. 過酷過ぎる?然り。搾取じみてる?然り。奇妙な儀式だの、むしろ一生に一度だって関わりたくないタイプの人々との気まずい出会いだのでいっぱい?その通り。
13. それでも、誰もが同じ目的を共有してそこにいる。その目的自体、同じボスから同じアシスタントを通じて伝えられたものだ。おまけに皆同じ服を着ているから、誰も自分がイケてないんじゃないかと悩まずに済む。
14. そして終りの時が来れば誰もが、数々の成功にも関わらず、生まれ故郷の小さな田舎町への忠誠心を守り続ける15億からなるこの組織に対する評価を新たにして去ってゆく。
15. そうこうしている間にも、毎年恒例の圧死者数はわずか数百に留まり続けているんだぞ。
スーラ7
1. さて、ここまでイスラムについて早足で語ったが、どうにかこうにかまとめに入れたようだ。問題ないようならこの辺で終りにしよう。これ以上書き続けていれば、わたしの名においてわたしに対して聖戦を布告する連中が現れかねない。
2. 最後に、各所の宗教関係者の内輪において大いなる憶測を巻き起こしているある話題について言及しておこう。オサマ・ビン・ラーディンと9/11のハイジャッカーたちを待ち受ける死後の運命についてである。
3. 人々の多くは、彼らは地獄の最底辺で永遠の業火に焼かれて苦しんでいるに違いないと信じている。だが一部のダイ・ハード(あるいはダイ・イージーと言うべきか)な原理主義者は、彼らは天国でわたしと72人の処女に囲まれてゆったりのんびりくつろいでいると信じている。
4. どちらでも好きなように信じるがいい。わたしは来世についてのなぜ・どうして・どこにといった詳細は決して明らかにしまいと誓っている。
5. この話題に触れたのはあるひとつの、 –– あなたがたの視点から見た場合の –– あるひとつの側面が、常にわたしの好奇心を刺激するからだ。
6. 72人の処女という名のつり針。そしてそれこそは、わたしから殉教者へ授けられる最大の報酬である。と、どうも信じられているらしいな。
7. 考えてみよう。72人の処女とはまた、相当たくさんの処女だぞ。
8. もしもわたしが受肉したヘテロの男なら、そして72人の女たちが天国でわたしを待っているなら、然り、そのうち何人かは処女であってほしい。それは認める。間違いない。
9. だが少なくともそのうち2、3ダースくらいは何かしら経験済みであった方がいい。
10. 実際のところもしも、もしもわたしなら、少なくとも6人かそこらは気合いの入った夜の女であってほしい。
11. それに本気のプロフェッショナルも何人か。
12. いや、何もこれはわたしの個人的な束の間の満足だけを問題にして言っているのではない。そういうのの方が、ういういしい新入りたちのブレイクスルーにも大いに役立つはずだろうが。
13. いずれにせよ、これは単なるいち個人の感想である。
14. それにたとえわたしの言った通りになったとしても、9/11のハイジャッカーたちには何の関係もないことだ、
15. 地獄の最底辺で永遠の業火に焼かれて苦しみ続けるあの連中には。
16. (おっと!)
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