商人とオウム

『精神的マスナヴィー』1巻
ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー

 

商人とオウム

あるところに商人がいた。商人はオウムを飼っていた。可愛らしいオウムは、鳥かごに閉じ込められていた。

さて商人が、インドへ向けて旅の準備をしていた時のことである。彼は寛大で太っ腹な男だった。そこで彼は奉公人や女中達に言った、「何が欲しいか言ってみなさい、おみやげに持って帰って来てあげよう。もうすぐ出発だ、手短かに言ってみなさい」。奉公人も女中も、皆それぞれ口々に欲しいものの名を言ってねだった。商人は善良な男であったから、彼ら全員に望むものを持って帰ると約束した。

彼はオウムにも尋ねた、「さてさて、おまえのことを忘れたりはしないさ。おまえにも何か持って帰ってやろう。インド土産に、何を持ち帰って欲しいか言ってごらん」。オウムは言った、「もしもインドの地でオウムの群れを見かけたら、どうぞ彼らに、私の仲間に伝えて下さい、今の私の有り様を。

- 伝えて下さい、『天の定めか、かくかくしかじかのオウムが一羽、私の鳥かごに囚人のごとく閉じ込められておりますよ。あなた方のように、自由に飛ぶオウムの仲間を恋しがっております』と。『かのオウム、あなた方に敬意を表し、公正とは何かについて教えを乞いたいと言っております、正しく導かれるにはいかなる手段、いかなる方法があるのでしょうか』と。

『仲間達の許へ帰りたいという私の願いは捨て去られるべきでしょうか?あきらめて、友と切り離されたことに慣れるべきでしょうか?このまま一人ぼっちで寂しく死を迎えるべきでしょうか?』と。そしてこうも伝えて下さい、『友情にかけて。忘れないで下さい、ここに一羽の哀れなオウムがいることを。草原を吹き渡る朝の風の中で、時々は思い出して下さい、私のことを』と!」。


友に記憶されることの、何という幸せか。忘れ去られること無く、慕われ続けることの何という幸せか。ましてやそれが、愛し愛される者同士であればなおさらのこと、ライラとマジュヌーンのように。同時に、その逆に、あこがれる友があることもまた幸せなことだ - 互いが、互いを思い合う友同士であれば更に幸せなことではあるが。

私は私の血で満たされた杯、友に飲み干されるのを待っている。最愛の友よ、飲んでくれ、この杯を。一杯のぶどう酒を飲み干す時、私を思い出してくれ。忘れないでくれ、その杯を傾ける時、私を追悼してくれ。そしてほんの一滴、地にこぼしてくれ。泥と塵にまみれて、この地に倒れた私のために。

探しても探しても見つからぬ。あの約束もこの誓いも、一体どこへ流れてどこへ消えたのだろうか。砂糖菓子のように甘いあの唇でわしに告げたあの言葉は、一体どこへ消えたのだろうか。友よ!私というみじめな奴隷を置き去りにした理由を教えてくれ。私は何か悪いことをしたのだろうか。悪には悪で報いるというわけか、友よ。私を裁くのか、友よ。

それでも私は恋しい、恋しくて恋しくてたまらない。楽器の音よりも、奏でられる調べよりも、友の冷たい仕打ちの方が好ましい。互いに怒りをぶつけ合い、ののしり合うことの方が恋しい。なぜ私を置き去りにした?これが復讐だとしても、それでもわが命よりもなお恋しい。これは友が私に残した炎、私と友との親愛の名残り。消したりなどするものか。これ、この炎の放つ光にまさるものなどないのだから!これは哀悼の炎であり、同時に祝祭の炎なのだから!

- 友を失った私の悲しみは、友が私に残した形見だ。これほど甘いものもなく、これほど美しいものもない。私以外の誰が知るだろうか、友の真の姿を。友が去ってからというもの、私はこうして愚痴ってばかりだ。友は、私のことを信頼していたであろうか。私から去った時、少しは私を思いやってくれていたであろうか。傷が深くならないようにと、優しさゆえに去ったのだろうか。

私は夢中だった、友の驚くべき凶暴さと、驚くべき繊細さ、優しさの両方に夢中だった。まるで正反対だが、そのどちらもが素晴らしかった。そのどちらをも、私はあこがれた。今でもそうだ - 私がこうして、ナイチンゲールのように夜通し嘆きつつ語り始めたのもそのため。友に去られた悲しみの棘に追い立てられ、ふと気付くと、私はこの庭にたどり着いていた。

だがナイチンゲールになってはみたものの、これはまたずいぶんと不思議な、奇妙なやつになってしまったものだ。私というナイチンゲール、こやつは一体どうしたことか。口を開けば、薔薇も棘もおかまい無しについばんでは食べ散らかす。薔薇に恋して玄妙な声で鳴くというよりも、これでは火を吹く怪物ではないか。否、否。それもこれも、全ては友への愛のため。私の歌がまずいようでも、その中には、友への愛が潜んでいるのだと思っておくれ -

わが最愛の友は孤独を愛した。わが最愛の友は、私と二人で道をたどるよりも、一人でたどることを選んだのだった。