終わりに:メディナを焦がした大火事について

『精神的マスナヴィー』1巻
ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー

 

終わりに:メディナを焦がした大火事について

ウマルが治めた時代のこと。メディナの都で大火事が起きた。石までもが、まるで乾いた丸太のように燃える勢いだった。建物にも家屋にも燃え広がり、炎は鳥の巣から翼までをも襲って駆け抜けた。都の半分は、炎で燃やしつくされた。

水も驚愕して炎を怖れた。居合わせた幾人かの賢い者達が、水や酢の皮袋を火に向かって放り投げた。けれど炎は意固地になり、ますます燃え盛るばかりだった。人々はウマルの許へ急ぎこう言った、「我らの火事は、水では消し止められませぬ!」。

彼は言った。「あの炎は、神の御しるしの一つだ。あなた方の不正が、焰となって燃えているのだ。水は捨て置け、パンを施せ。貪欲を去るのだ、あなた方が私の仲間なら」。人々は言った、「私達の扉は開け放たれておりますとも。物惜しみせず、寛大に振る舞っておりますとも」。

彼は答えた。「否!あなた方は、ただ習慣と規則に従っているに過ぎぬ。あなた方は、決して神のためにその手を開いたのではない。優越感を味わうがため、見栄と驕慢のためであり、畏怖と篤信のため、感謝と嘆願のためではない」。

財産は種子だ、塩辛い土地に蒔いて何になろうか。盗人に、剣を与えて何になろうか。Ahl-Din(宗教の友)と、Ahl-kin(神の敵)を峻別せよ。神と共に坐す者を求めて共に坐せ。誰しもが、自分と同様の者をこそ身内と思って尽くすもの。愚者ほど自分こそは真に善行を為す者、真に信仰ある者と思い込むもの。