アーイシャ ー 神のご満悦があらんことを ー がムスタファに、「あなたは場所を構わず礼拝なさる」と言った時のこと

『精神的マスナヴィー』2巻
ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー

 

アーイシャ ー 神のご満悦があらんことを ー がムスタファに、「あなたは場所を構わず礼拝なさる」と言った時のこと

ある日(預言者の妻)アーイシャが預言者に言った。「ああ、神の御使いよ。人前であろうと無かろうと、あなたと来たら何処でも構わずご自分がいらっしゃる場で礼拝をなさる。

3425. たとえ不潔な者や卑しき者が、その場を駆け回っていようが全く無頓着でいらっしゃる。月経の最中にある女がいようが、不躾な子供らが騒いでいようが、不埒な者どもがつい先ほどまでそこにいたような場所でさえ、気にかけようとはなさらない」。これに答えて預言者は言った。「大いなる成熟を果たした魂に対しては、神は不純なるものを純なるものに転じたもうと知りなさい。それゆえ、私が礼拝を望む場所ならば何処ででも、神はその恩寵もて清浄をもたらして下さる、天界の七層めにも劣らぬくらいに」。用心せよ、用心せよ!(精神における)王侯たちに妬心を差し向けるのは止めよ。さもなくば、あなた方は地上における悪魔と成り果てよう。

3430. 彼が飲めば、毒であるものも蜜となる。だがあなた方が食べれば、蜜であるものも毒になる。何故ならば、変容を遂げたのは彼の方だからだ。彼の本質は変容し、彼の行為も変容を遂げた。今や彼は神の恩寵そのものとなり、彼の中にあるどのような炎も、全て光に変ぜられた。アバービールの鳥たちは、彼ら自身の裡に神の御力を持っていた。でなければ、どうして鳥が象を打ち負かせただろうか?群れなす小さな鳥達が、軍勢を全滅させたのだ ー あなた方に、御力は全て神より来るということを知らしめるために。妬心ゆえの非難を避けよ。もしもその類いの誘惑にかられたなら、その時は象の所有者について知らせるスーラ(コーラン105章)を読め。

3435. もしも聖なる人々に対する敵愾心を燃やし続けようというのなら、好きにせよ、望むまま彼らに敵対するがいい ー そして私を不信仰の徒と看做すがいい、懲罰を逃れ得られるものならば。

 


アバービール 「象の所有者に関する章(スーラ)」、すなわちコーラン105章の3節目において「群れなす数多の鳥(tayr ababil)」と訳される語から来ている。鳥の種類を指す語ではないとされる一方、紅海を渡るアマツバメを指すとする説もある。西暦6世紀、象を先頭にアビシニアの軍勢がアラビア半島に侵入した際、進軍中に象が命令を拒否して座り込み、そこへ鳥の群れが上空から石つぶてを落としたため、軍勢は壊滅しアラビア半島は難を逃れた。コーラン105章はこの故事についての章である。この「象の進軍」が起きたのは、ムハンマド誕生の年ともされる西暦570年であるとする説が広く知られているが、近年においては570年よりももう少し以前の出来事であったという説も存在する。