小咄:蛇を盗む話

『精神的マスナヴィー』2巻
ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー

 

小咄:蛇を盗む話

135. みじめな泥棒が盗みを働いた。愚かなことに、泥棒はそれをお宝に違いないと勝手に思い込み、うまいことせしめてやったと独り合点していた。ところが運び去った包みに入っていたのは蛇捕りの蛇だった。それで盗んだ泥棒の方は、あわれにも蛇に噛まれて殺されてしまった。もう一方の盗まれた蛇捕りは、蛇の一噛みから逃れることとなった。男が死んでいるのを見て、蛇捕りは何が起こったのかを理解した。彼は言った、「私は魂の底から神に祈った、こいつを見つけ出し、盗まれた蛇を取り返させてくれ、と。神よ、感謝します、あの祈りを叶えずにいて下さったことを。おかげで命拾いしました。蛇を盗まれて、私は損をしたとばかり思っていたが、実は得をしていたのだ」。

140. 神は祈りの多くを慈悲深くも退けたもう - 多くの祈りが、破滅を招くものであるがゆえに。