礼節の祈り

『ルーミー詩撰』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー

礼節の祈り 1

 

共に祈ろう、神よ、我らに自制の心を与え給え、と
自制を失い、主の恩寵までも失うことのないように2

自制の心無き者は、自らを滅ぼすだけでは足りず
世界じゅう、いたるところに火の粉をまき散らす

傲慢と無礼は常に我ら自身から生じて
悲しみの暗がりへと我らを追い立てる

友へと至るこの道において傍若無人に振る舞う者は
まるで山賊のような者、人と呼ばれるに値しない者3
秩序あればこそ諸天も光に包まれる
自制あればこそ天使も神聖たりうる4

敬意を欠いたがゆえに太陽は蝕に遭って影を落とし
傲慢さゆえにアザーズィールも扉の外へ放逐された5

 


1. 『精神的マスナヴィー』1-78.

2. Adab とは、自己管理と精神文化の結実としての性質、情緒、そして礼節と定義してよいだろう。それは聖パウロの説く αγαπη ” it does not behave itself unseemly “(不作法をしない)にも通じる。

3. 諸々の情欲を制御できない者は、それゆえに「人間」の名に値しない。

4. 以下、参考にワーズワースを引用する。

汝は星をしてその道を過《よぎ》らしめ、
最も古き天も汝のために鮮やかで強固だ。
(『ワァヅワス詩集』より「義務の頌」、幡谷 正雄訳)

5. どのような場合であれ、定められた軌道から敢えて外れようと太陽が目論めば、神の罰として蝕が課される。アザーズィールとは、失墜する以前のイブリースの名である。