『ルーミー詩撰』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー
「未だ己を知らず」1
神の名において何となろうか
見よ、われは未だ己を知らず
われは十字架も三日月も崇めず
背教者に非ず、正統派に属さず
東も西も、わが故郷に非ず
陸も海も、わが故郷に非ず
天使に連なるものに非ず
精霊に類するものに非ず
われは火炎と水泡とを出自とせず
われを形作るは砂塵と朝露に非ず
わが故郷は中国ほどはるか遠方に非ず
サクシン、ブルガールほど近隣に非ず
現世にも来世にも棲家を持たず
楽園にも地獄にも居所を持たず
エデンとリズワーンから墜ちず2
アダムの血縁に連なる者に非ず
さいはてを超えてなお遠く
ひとつの影も跡もなき処に
血肉も霊も脱ぎ捨てて、
われは新しき生を諾う、
愛するものの魂の裡に。
*1 『四行詩集』31.
*2 リズワーン 楽園の鍵を保持する天使の名。