罪深き者

『ルーミー詩撰』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー

罪深き者 1

 

「外側には、素晴らしく秩序立てられた世界が広がっている」

もしも胎内に包まれて眠る胚に
そう語りかけたとしたらどうだろう

 

心地よい大地は果てしなく、どこまでも遠く
数え切れないほどの喜びに溢れている
食べるものだって 好きなだけ選び放題に選べる
山々 海原 草原 かぐわしい果樹園や庭園
種の蒔かれた畑がそこかしこに広がって
見上げれば高い空は光に満ちあふれ
太陽が、月明かりが、無数の星々がきらめいている
目を見張るばかりのこの素晴らしさは
とても語り尽くせるものではないよ

それなのに君ときたら
どうして暗がりに閉じこもっているんだい
狭苦しい牢獄で喘ぎながら
いつまで血を啜って過ごすつもりだい

 

胚は変わらず胚のまま 昏い目のまま心を閉ざす
語りかけには背を向けて 信じようともしないだろう
もの見ぬ者には 想像することも出来ないのだから

聖なる人々がこの世において
人々に語りかけるときもこれと同じ

「外側には、無色透明の果てなき世界が広がっている」

けれど世の人々の耳には届かない
我欲によって塞がれれば耳は聞くことも出来ず
自己愛によって塞がれれば目は見ることも出来ない

胚でさえ滋養に執着する たとえそれが汚血であろうと
我欲を養うためならば どんな低い処でもしがみつく
そうして自分を外側の世界から 新たな知から切り離す
まるで血の他には何も知らぬ ちっぽけな胚のように

 


1. 『精神的マスナヴィー』3-53. 『マスナヴィー』には、精神における再生を赤子の誕生とそれに続く離乳に喩える多くの句が挿入されている。