第29話

『スーフィーの寓話』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー

「猫と肉」1

 

ある男がいた。男には妻があった。何もかもを見下しておりだらしがなく、おまけに貪欲な妻であった。男が家に持ち帰るものは全てむさぼり食ってしまう。それでも哀れな男は、何も言わず黙っているのだった。

ある日のこと。客人を招くことになり、男は無限とも思えるほどの苦労をし、万難を排していくばくかの肉を手に入れ家に持ち帰った。ところが、妻がこれをすかり食い尽くしてしまった。ケバブ2にして、ぶどう酒を片手にぺろりと平らげてしまったのである。そこへ夫が帰ってくると、妻は嘘をついてごまかそうとした。

「肉はどうした、どこへやった」、男は尋ねた。「客人が来ているんだぞ。美味い料理でちゃんとおもてなしせにゃならん」。「あの肉なら、猫が食べちまったのよ」、妻は言った。「出来ることなら、もう一度買いに行っておくれよ」。

夫は使用人を呼んだ。「アイバク、秤を持って来い、猫を量るぞ」。量ってみると、猫は2分の1マウンドの重さだった。「この嘘つき女め!」、男は叫んだ。「肉は2分の1マウンドと6ドラクマより重かった。そして猫はちょうど2分の1マウンドだよ、奥さん。見ろ、これが猫だと言うのなら、肉はどこへ行ったのだ?それともこれが肉だと言うのなら、猫はどこへ行ったのだ?」。

 


*1 5巻3409行目より。

*2 肉を焙った料理。

*3 マン(マウンド)は約2ポンドと同じ重量。