『スーフィーの寓話』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー
「盗賊と村の長者どの」1
人殺しをもためらわぬグズ2の盗賊が、ある村に急襲をしかけた。
盗賊は村の長者を二人ばかり捕え、そのうちの一人を処刑しようとした。盗賊達が彼の両手を縛ると、彼は叫んだ、 -
「おお、貴公子どのよ、帝国を支えるいと高き柱よ!一体どのような理由で、私を殺そうというのですか?それほどまでに私の血に渇いているというのですか?私はあなた方のために祈りましょう。誓っていいますが、私は貧しく、何ひとつ持たない身の上です。私を殺したところで、一文の得にもなりませんよ」。
グズの一人が答えた。「おまえを殺し、おまえの友にその様子を見せつけ脅してやるのだ。おまえの友はすっかり怯えて、隠し持っている金の在り処を白状するだろう」。
「何をおっしゃる」、彼は言った、「あいつは、私よりもうんと貧しい男ですよ」。「ああ、あいつもそう言っているぜ」、グズは答えた。「ごまかしているのだ。あいつは金を持っている」。
「ちょっとした見解の相違というやつですな」、彼は言った。「しかしこうなると、どちらが本当か分かりませんぞ。あいつも私も、金持ちである可能性は五分五分ですからな。
どうでしょう、私よりも先にあいつを殺してみるというのは?私だってその場面を見せつけられたら、怯えて金の在り処を白状するかも知れませんよ」。
*1 3巻2570行目より。
*2 「グズ」もしくはオグズ、テュルクメンとも呼ばれた遊牧民族。