『預言者』
ハリール・ジブラーン
衣裳について
織り手が問うた、
「お話し下さい、衣裳について」
彼は答えて言う、
衣裳とは、美しさを覆い隠しはしても醜さは隠せない。
真の自由と聖域とを衣裳の裡に追い求めてみたところで
得られるものはただ鎧と鎖のみ
あなたの衣裳を通してではなく、あなた自身のその肌で
風と太陽とに出逢えたのなら!
なぜなら生命の吐息もその御手も、
太陽の光、風の中にこそ見いだせるものなのだから。
あなたがたのうちある者は言う、
「衣裳を織るのは北風の業」と。
私は言う、然り、北風である、と。
北風は
羞恥の織り機と脆弱な肉の糸で
そのしごとを成し遂げる、
そして森に還っては我らをあざ笑う。
忘れてはならない、
汚れた眼を遮るのは慎みであることを。
そしてもはや汚れのないときには
衣裳は足枷となり果てて心を堕落させる。
忘れてはならない、
大地はあなたのはだしに触れられて喜び、
風はあなたの髪とたわむれるために吹く。