『預言者』より:法について

『預言者』
ハリール・ジブラーン

 

法について

そこで一人の法律家が尋ねた:
師よ、私たちの法については何と言われるか
そして彼は答えた:

あなたがたは法を作ることに喜びを見いだし、
それを壊すことにはさらなる喜びを見いだす。

砂の塔を作っては壊し、砂の塔を作っては壊し、
まるで海辺に遊び笑いさざめく子供たちのよう。

だがあなたが砂の塔を作る合間にも、
海はさらに多くの砂を浜辺へと運ぶ、

あなたが砂の塔を壊せば、
海もあなたと一緒に笑う、
海は無垢の者と共に笑う。

しかし私は何と言おう

海を生命とせず
人の手による法を砂の塔とも知らずに
岩を生命として
法の鑿を手に自身を刻もうとする者よ。

歩けぬ者は踊り子を憎み
繋がれることを好む牛は
森の鹿を迷える者と呼び
老いて殻をやぶれぬ者は
脱皮を繰り返す若い命を
恥知らずの裸とののしる

婚礼の宴に誰よりも先に駆けつけた男が
散々に飲み食い散らかしたあげくの果て
ふくれた腹をさすりながら去り際に言う
「全て宴は冒涜であり集まる者は無法者」

しかし私は何を語ろう

光なくしては立てぬ者が
光にその背を向けるとは

彼らの眼は彼ら自身の影を見る
彼ら自身の影が彼らの法となる

彼らにとって光とは何の意味も持たず
それはただ影を落とすためだけにある
彼らが「法を守る」と言ったところで
うずくまり影に身を潜めるのが関の山

だが光に顔を向け光に向かって歩む者を
どうして地の影が引き止められるだろう

風と共に旅をする者の行き先など
どうして風見鶏が知り得るだろう

どうして人の手による法が
あなたを縛り得るだろうか

あなたが自身を繋ぐ軛を外し投げ捨てたところで
誰にも属さぬ牢獄では誰があなたを罰するだろう
踊るあなたの足が踏んだそれは誰にも属さぬ鉄鎖
誰にも属さぬその道に衣裳を投げ捨てたところで
誰があなたを裁きの庭へと連れ出すなど出来よう

オルファレーズの人々よ

たとえあなた方がドラムを包み隠し
リラの弦を緩めて細工したところで

誰がひばりに「歌うな」と
命ずることなど出来ようか。