『精神的マスナヴィー』1巻
ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー
小話:寛大なカリフ
- さて。
それでも天の市場に足を踏み入れることをためらう人のために、
もうひとつだけ小話を語っておきたい。
昔々のこと。寛大さにおいては、
かの伝説の王ハーティム・ターイーでさえも色褪せるほどに寛大なカリフがいた。
気前の良さという名の旗を高く掲げ、カリフは持てるものを惜しみなく与えた。
そうして世界から、飢えと貧しさを一掃したのだった。
その意志は、まるで海の真珠のよう。
その存在は、世界にとり純粋に恩恵そのもの。
その寛大さは瞬く間に世界中に広まった。
世界の果てにあるというカーフの山際に始まり、
再びカーフの山際に至るまでを一巡した。
乾ききったこの世界にとり、
カリフは慈雨を運ぶ雲のように優しかった。
恩寵と援助のあるところならばどこであれ、
常にその中心にいるのはかのカリフであった。
カリフが贈り与える様子を見て、海も山もおのれを恥じて震えた。
その寛大さに胸を打たれて、カラヴァンに次ぐカラヴァンが、
かのカリフへと至る道を選び我れ先にと急いだ。
カリフに通じる門をくぐろうと、門を囲む広場を中心に、
多くの貧しい人々が集まり輪を作って回旋した。
カリフの寛大さを讃える彼らの声は世界中に響き、
その名はますます広く、はるか遠くまで知れ渡ることとなった。
ペルシアの人も、ギリシアの人も、テュルクの人も、アラブの人も、 -
皆が皆、揃ってカリフの寛大さと気前の良さには、
驚きただあっけにとられるばかりだった。
かのカリフは生命の水そのものだった。
その恩恵は海よりも広く、深く、尽きることがなかった。
アラブの人はもちろん、アラブではない人に対しても、
カリフの寛大さは変わることがなかった。
- やがて世界中の人々が、その水を飲んで生を取り戻したのだった。