ピール(導師)の資質と、服従の徳に関する覚書

『精神的マスナヴィー』1巻
ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー

 

ピール(導師)の資質と、服従の徳に関する覚書

ああ、これ。「真理を光り輝かせる者」よ、フサムッディーンよ。一枚か二枚、紙を持ってついて来い。ピールについて解き明かしておこう。おまえは書きとり、例の詩に付け加えておいてくれ。

おまえ、また痩せたのか。そんなことでは体力が持たぬぞ。もしものことがあっては、皆が困り果てるぞ。おまえの知力という太陽無しには、真っ暗闇に光も無く取り残されるようなものだ。表向きのことは、全ておまえがよく取り仕切ってくれている。おまえはランプの、ホヤであり同時に芯でもある。

しかし忘れてくれるな。おまえの真の仕事は、心に関することだ。糸口となって、手がかりを与えられるのはおまえだけだ。糸口はおまえの手の内にあり、糸はおまえの意志そのものだ。そして魂の知識という玉を連ねて、心の首飾りを作れるか否か、おまえの優しさひとつにかかっている。

少し付き合え。この道を知るピールの責務というものについて語るから、それを書き記しておいてくれ。 - ピールはよくよく吟味して選べ。そして選んだのちは、彼を道そのものと思って仕えよ。季節で言うならばピールは夏だ、その他の人々は秋のようなものだ。その他の人々が夜ならば、ピールとは夜の空に輝く月だ。

私は、わが年若き運命(フサムッディーン)にピールの名を授けた。普通であればピールとは、年長の者に対する呼び名だ。彼はまだ若い、だが真理によってすでに老成している。時の流れによってなし崩しに老人になった者とはわけが違う。

しかしまあ、それにしてもこの男の年寄りくさいことこの上ない。いつ頃から、というのではなくそれが性分なのだ。奇妙な奴め、これほど珍しく面白い真珠はめったにあるものではないぞ。葡萄酒も、古ければ古いほど濃く強くなる。黄金の細工も、古ければ古いほど高値がつく。

ピールを選べ。ピール無しには、この旅はあふれんばかりの苦悩と恐怖と、危険に満ち満ちたものになってしまう。付き添い無しでは、以前に何度となく通った道ですら迷いの種となるだろう。この道を、一人で旅しようとしてはいけない。初めての道で迷わぬ者はいない。ピールを持て、案内役から目を逸らすな。

ふざけている場合ではないぞ。影のように守る者なしには、おいそれと出来おおせる旅ではないのだ。グール(悪鬼)どもの叫び声に行く手を阻まれ、頭の中は惑乱でいっぱいになり、たちまち道に迷うことだろう。グールどもは旅人を誘惑し、道を踏み外させ、破滅の方角へと連れて行くだろう。あなた方よりもよほど世知に長じた老獪な者であってさえ、この道においてはあっけなく滅び去っていった。

コーランに学べ。邪悪な魂イブリースについて、旅人達の破滅について。彼は旅人達をはるか遠くへと連れ去ってしまう。善行もろとも、身ぐるみ剥がされ素っ裸で後戻りさせられる。奴の方がこの道をよくよく知っているのだ、何しろ百年も、千年も前からうろついているのだから - 見よ、折り重なった屍を、骨と髪を!忠告を受け取れ、ロバの手綱をしっかりと握れ!

あなた方の、ロバ(欲望)の首ねっこをしっかりと押さえておけ。そして連れて行け、道の方へ。あなた方を良く知り、また良く守る者の方へ。用心せよ、用心せよ!ロバの勝手気ままにさせてはならぬ、手綱を決して離してはならぬ。ロバは道には興味がない。あれらが欲しがるのは、緑の草を腹一杯に食べられる平野だ。注意を怠り、一瞬でも隙を見せようものなら、ロバは迷わず平野の方へ行ってしまう。

道を行く者にとり、ロバ、すなわち自分の欲望こそが最大の敵となる。草、草、草、ロバは狂ったように草を食むことばかりを欲する。他のことには一切興味を示さない。一体、何人のロバの飼い主が、ロバのために破滅したことだろうか!もしも道に迷ったなら、あなたのロバに尋ねよ。そしてロバの指し示す方とは反対へ行け。間違いなく、それが正しい道だ。

預言者は言った、「婦人方の話を聞け。それから、婦人方の言葉とは反対のことをせよ。婦人方に逆らえる者ならば、少なくとも破滅に至ることはない」。欲望を友とするな。熱情や官能に惑わされるな。それらは全て、あなた方を神の道から逸らさせる。欲望を制し、影のように守るのがピールの務めだ。そしてこの世には、彼らの他にそれが出来る者は皆無である。