『精神的マスナヴィー』1巻
ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー
スーフィーは王侯の正面に座す
王侯の習慣について語っておこう。
以前にも語ったことがあったろうか、聞かせたことがあったろうか。
まあ、よかろう。語るうち、聞くうちに思い出すだろう。
王侯の左側に、戦士達が立ち並んでいる。
何故なら、心臓が肉体の左側にあるからだ。
心臓は勇猛の座す場所。
それで戦士達の立つ場所も、左側と決まっている。
右側にいるのは法官達と書記達だ。
文書をしたため、帳簿を管理する才は右手に属する。
それで彼らの場所も、右側と決まっている。
さて、彼らの正面に座する者がある。スーフィー達だ。
王侯が、スーフィー達に正面の場所を与えるのは何故か。
スーフィー達が、魂を映し出す鏡だからだ。
スーフィーの役割、それは鏡となることである。
鏡として重用されるからには、その胸をよくよく磨いておかねばならぬ。
神を祈念せよ。瞑想せよ。神を知らぬ鏡など何の役にも立たぬ。
汚れひとつ、くすみひとつあってはならぬ。
汚れくすんでいるようでは神を知ることもままならぬ。
神を知らねば、純粋に、ありのままに物事を映し出すことも出来ぬ。
全ては、創造の主たるライオンにより生を受けたもの。
それが誰であろうと、美しくないはずがない。
美しく生まれついたものには鏡が必要だ。
美しいものを見れば、魂が磨かれる。
美しいものを見れば、心に畏敬の念が育まれる。
スーフィーの仕事とは、鏡に徹することである。
美しく生まれついたものの顔を、鏡となって映し出すことである。
そして鏡を覗く者に、知らしめることである -
「あなたはこんなにも麗しく、あなたはこんなにも美しい」、と。