限られた視点からものを見ることについて

『精神的マスナヴィー』1巻
ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー

 

限られた視点からものを見ることについて

ヒトというものは、どうにも自分の立ち位置からものを言い、
また自分の立ち位置からものを行なうことから逃れられぬ。

誰しもが、自分の立ち位置からものを見、ものを聞き、他人に出会う。
青いガラスは太陽の光を青く見せるし、赤いガラスは太陽の光を赤く見せる。

数あるガラスのうちで、色彩の領域を離れた透明なガラスだけが、
最も正直に、ありのままの太陽の光を見せてくれる。

- 透明なガラスの如き人物、それがイマム(導師)だ。

その昔、アブー・ジャフルが、我らがアハマドに向って出会い頭にこう言った。
「忌まわしいやつめ、醜い男め。ハーシム家の、とんだ面汚しよ」。
「全くその通り」、アハマドは言った。
「あなたは正しく真実を述べている、無礼で遠慮が無いけれど」。

次にシッディーク(アブー・バクル)が、彼に出会ってこう言った。
「これはこれは、わが太陽!東の産にあらず、西の産にあらず。うるわしく輝く方よ!」。
「全くその通り、」アハマドは言った。
「あなたは正しく真実を述べている。友よ、現世からすっかり足を洗ったのだね」。

これの一部始終を見ていた人々は言った。
「我らが王よ、あなたは二人が、二人共に真実を述べていると仰るのですか」。
「それぞれ、全く正反対のことを言っているのに」。

彼は答えた - 「私は鏡だ。御手によって磨き込まれた鏡なのだよ。
テュルクの人であろうが、ヒンドの人であろうが、
誰でも私を見る者は、私の中に彼ら自身を見ることだろう」。