ソロモンの鳥たち

『ルーミー詩撰』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー

ソロモンの鳥たち 1

 

宮殿に飼われた鳥たちの議論は
まるでこだまのように虚しい
ソロモンの鳥たちは何処にいるのか
彼らの言葉は何処で聞けるのか2

一瞬たりともソロモンと
出会ったことのないきみが
どうして彼らの鳴く声を
聞き分けることができるだろう

東でもなく西でもない
はるか彼方を羽ばたく彼らの翼
聞く者の耳を捉えて離さない
ぞくぞくするようなあの羽音

神の御許から地上へ舞い降りて
地上から神の玉座へと還るその旅路は
世界の奈辺を往こうとも
まばゆい光と尊厳とに満ちあふれている

ソロモンから離れた鳥をごらん
暗闇を愛する蝙蝠をごらん
きみはソロモンと離れてはいけない
永遠に洞窟から旅立てなくなってしまう

前腕の長さだけでも彼方を目指して進めば
前腕に代わるきみ自身の物差しを持つ日が来るだろう3
たとえ這ってでも彼方を目指して進み続ければ
飛べるようになる日が来るだろう

 


1. 『精神的マスナヴィー』2-3758. ソロモンは「鳥の言葉」を教わった者とされる(コーラン27章16節)。ここでは、彼は「完全なる人間」であるスーフィー導師を象徴している。

2. たとえどれほど技巧を凝らそうとも、宮廷詩人たちがひけらかす大仰な賛辞に満ちた頌詩など、神秘主義者たちが神の霊示に促されて語る言葉と比較すれば全く無意味なものでしかない。

3. ハラカーニー(著名なスーフィー導師)は「私は梯子の一段めに足をかけただけで、たちまち神に辿り着ける」という言葉を遺している。「完全なる人間」とは被造物の理想像であり、あらゆるものの真の価値を判断する際の基準である。

27-15. われらはかつて、ダビデとソロモンに知識を与えた。二人は言った、「神の僕(しもべ)なる多くの信者たちよりもまさる恵みを垂れたもうた神に栄光あれ」
27-16. ソロモンはダビデの跡を継いで行った、「人々よ、われわれは鳥のことばを教わった。また、各種のものを授けられた。まことに、これこそ明白な恩恵である」