第12話

『スーフィーの寓話』
メヴラーナ ジャラールッディーン・ルーミー

「いつわり無き悔悟」1

 

金曜日の礼拝に参加しようと、ある男が道を急いでいた。ところがマスジド2に来てみると、人々が礼拝堂からぞろぞろと外へ出てくるのが見えた。

どうしてこんなに早くから立ち去ろうとしているのか不思議に思い、出て来た一人に尋ねてみた。彼が答えるには、「預言者はすでに集まった人々と一緒に祈り、礼拝も終えてしまわれた。預言者が祝福の言葉を言い終えてしまってからやってくるだなんて、おまえさんも相当な間抜けだなあ」。

「ああ、しまった!」、彼はそう叫び、大きな、大きなため息をひとつ吐き出した。熱く焦げるため息が、煙のように立ちのぼった。まるで、彼の心が流す血の香りを漂わせているとすら思えるほどだった。

「あんた、そのため息を私にくれないか。替わりに私が済ませた礼拝を、残らず全部おまえにあげるよ」、集まっていた人々の一人がそう言った。「それなら、私のため息をあんたにあげるよ。替わりに、私はあんたの礼拝を受け取ろう」、彼はそう答えて礼拝を受け取り、申し出た者は悲嘆と憧憬が込められたため息を受け取った。

その夜、彼が眠っていると、どこからか『声』が響いた -

「汝は今日、生命の水と救済を購った。汝が選び取ったもののおかげで、全ての人々の祈りは受け入れられた」。

 


*1 2巻2771行目より。

*2 第1話・註3を参照。(以降、当該用語については註を省略する)