福音が説くムハンマドについて

『精神的マスナヴィー』1巻
ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー

 

福音が説くムハンマドについて

ムスタファ、預言者の中の預言者。一点の瑕も無き人。
ムスタファの名は福音書の裡にも見出せる。
そこには彼の外見について、性質についての記述がある。
また彼の戦について、彼の食べたものについて、また彼の斎戒についても。
キリスト教徒の中には、聖なる報奨を得ようとする人々がある。
高貴なるその名を福音書に見出して、
麗しき記述を目にするたびに、彼らは顔をかがめて接吻する。
彼らは苦難や恐怖とは無縁の人々。
我らがここで語ったような苦難とも無縁の人々。
宰相や司祭達の引き起こした争乱を避け、
アハマドの名に庇護を求めて逃れた人々。
彼らも、彼らの子孫もまた栄える人々。
アハマドの光は彼らを助け、彼らの友となった。
一方で、アハマドの名を避け、軽んじる人々がある。
そしてそれ故に、自らを軽んじる羽目に陥る。
悪を弄ぶ宰相の仕掛けた軋轢の中に、取り残されたのも彼らだ。
司祭達の手に残された矛盾に満ちた巻物の数々によって、
彼らの宗教も聖法もまた崩壊の憂き目を見ることとなった。
かようにしてアハマドの名は多くの庇護をもたらす。
その名を見出す者の上に、守護の光が降り注がれる。
アハマドの名は、キリスト教徒達にとっても堅固な要塞となる。
信頼に足るこの名の、信頼の根源とは一体何か?
- よくよく、熟慮するが良かろう。