お出かけ:「黄金のアフガニスタン」

きのうは、東京国立博物館の特別展示、「黄金のアフガニスタン」を見物しに出かけました。
特別展 黄金のアフガニスタン ― 守りぬかれたシルクロードの秘宝 ―

プロモーション動画なんていうのもあったのですね。知らなかった。

あれもこれも、とてもおもしろい&興味深い展示品ばかりでした。

アフガニスタンと聞いて思い浮かぶ事物・その一というと、わたしの場合は仏像です。バーミヤンの大仏、とかという個別具体的なものではなくてイメージとしての「仏像」。それもギリシャ風の(ヘレニズムっていうんですか)、インドのそれとも違った種類の彫りの深さのある仏像。たぶん子どもの頃に見た世界美術大系とか、そういう種類の御本の記憶だと思います。お出かけした特別展にも仏像(の、部分)がありました。おぼえていた通りの、「美術室の石膏像」みたいな顔立ちの仏像も確かにありました。

でもその他は文字通り「見たことないもの」ばっかり。言葉で説明しようとするとたぶん何が何だか分からないと思うんですよ。例えば「丸い銅板にお魚の型押しがあって、そこにお魚のひれがいっぱいついてて、ゆらゆら、揺らせるようになってるやつ」とか。ぜんぜん意味分かんないですよね。でもこれ、わたしのボギャブラリーのせいじゃないんですよ。大丈夫。特別展の公式ツイッターが惜しげもなく画像を披露してくれている。これ。


ほーら。「丸い銅板にお魚の型押しがあって、そこにお魚のひれがいっぱいついてて、ゆらゆら、揺らせるようになってるやつ」で、ぜんぜんまちがってない。

それとか、「一世紀の、ディズニープリンセス・シリーズのキャラクター絵柄のコップ」。

Snow white
image source : Filmic Light – Show White Archive

ほーら。ぜんぜんまちがってない。

こういう展示を見に行くと、ひとつかふたつは「ああ、持って帰ってしまいたい」という何かを必ず見つけてしまうもので、今回は「アラバスター製のお皿」でした。アラバスター製の何とかかんとか、というのを目にするのはもしかしてこれが初めてかもしれない、いや初めてだと確信した、確信することに決めた。とろみのある質感で、オレンジがかった乳黄色で、ほとんど不透明にしか見えないのに、内側から光を透かして置き台がふんわりとオレンジ色に染まってて、はあ(うっとり)、ってなりました。

素材としてはそんなにめずらしいものではないはずだし、だから目にしたことがないはずもないんですが、でもおぼえていないんだから今までどこかで見てきたのは、ほんとうのアラバスターではなかったんだ。きのう見たあれがほんとうのアラバスター。だいたい「アラバスター」って響きからしてかっこいいですよね。「雪花膏」とか「雪花石膏」とかっていう字面もかっこいいし。

もちろん黄金も見ましたよ。「黄金の」と題されているくらいだし。黄金関係のお品物の展示室、本当に人の流れがわるかった。人は黄金が好きなんだなあ。わたしもきらいじゃないですが。「靴底」とか。


こまやかな細工の装飾品だとか金貨だとかもありましたけれども、一番ぐっときたのはこれです。「靴底」。これはいい。すごくいい。実用品ではない感が本当に気に入った。これねえたぶんねえ、職人さんがねえ、材料を渡されて「これで何か作っといて」って発注されて、それで最初はいろいろがんばって作ったんですよ。で、がんばって細かいの沢山作ったら疲れちゃったんですよ。あーつかれたもういいや、あとは叩いて伸ばしときゃいいや、って、そいで「靴底です」っつって納品したんですよ。

お昼ごはんをはさんで、午後はこちらも見てきた。

「東京藝術大学アフガニスタン特別企画展」

アフガン巨大壁画「完全復元」 東京芸大、ネットで資金集め

東京芸術大学がアフガニスタンの世界遺産、バーミヤン遺跡にある大仏立像の天井に描かれていた壁画の「完全復元」を進めている。(……)

旧タリバン政権破壊
シルクロードの要衝として栄えたアフガニスタン中部のバーミヤンには東西2体の大仏があったが、2001年に旧タリバン政権が破壊。同大が復元を進める東大仏の天井壁画も粉々となった。壁画は奥行き8メートル、幅7メートル、高さ3メートルで「太陽神」などが描かれている。同大によると、ギリシャの太陽神ヘリオスやイランのミスラ、インドのスーリヤなどの影響を受けたとみられ、ギリシャ文明とゾロアスター教や仏教が融合した東西文明の交流の象徴という。

特許技術を応用
復元には、京都大学人文科学研究所に残されていたポジフィルムを活用。1970年代に撮影された約1万5千枚のうち約150枚を高精細スキャンしてデータ化し、ゆがみを補正して画像をつなぎ合わせる作業を進めている。今後は、土台となる「基礎構造体」作りにも取りかかる。石のような質感を持つ軽量素材を使い、ドイツの研究者から提供された3D計測データを基に、微妙な凹凸を含めて壁面を再現。ここに、実物に近づけた粘土を塗る。その後、特許技術を使って、実際の壁画に近い質感を施した和紙に、原寸大で画像を高精細印刷。これを基礎構造体に貼り合わせる。仕上げは、天然石のラピスラズリを粉砕したものなど、実際と同じ顔料を使った手作業での彩色だ。(……)

クラウドファンディングで資金は無事に集めることができたそうです。でも資金が集まって復元図が完成したはいいけれど、今度は会期後どうするの?どこにどうやって撤去するの?ってなってた。復元図、「図」というか要するに洞窟天井部を再現したインスタレーションだし。「今ですねー、たいへんにこまってます」ってこの企画の言い出しっぺらしき客員の先生のひとが言ってた。「作ったもん勝ち」の精神でがんばって乗り切ってほしい。

そして帰宅してからひきだしの中をごそごそしてみたら出てきた。アフガニスタンと聞いて思い浮かぶ事物・その二。

IMG_0869父から母への、アフガニスタンからのおみやげ。四十年以上前の、(少なくとも、父のようなうかつなひとでもふらっと行って帰ってこられるくらいには)平和だったときの。