「アラブの春」関連本をめくっためも・その2。
エジプト革命―アラブ世界変動の行方 (平凡社新書)
自宅−代々木上原間1往復で読み終えられるだろうとふんでたんですけど駄目でした。思いのほかみっしりしていた。今の今までお名前も存じ上げないひとの御本です。エジプト近現代史がご専門とのことで、ここ1世紀くらいの間に起きた反乱、騒乱(あるいは成就しなかった革命)のたぐいをおさらいしたりするんですけど、そこにイランも含めて語ってらっしゃるのはなんかこう、新鮮。これ、別の御本のご案内的な意味で書かれたものだそうなので、じゃあその別の御本ってどんなものなのだろと思ったらこんな御本だった:
アラブ革命の遺産 エジプトのユダヤ系マルクス主義者とシオニズム
「革命」って、そっちの「革命」の話かよ!
うーん。えー。おもしろいのかなあ。でもなんかややこしそうだなあ。社会主義と共産主義にはさわっちゃだめ!ってモスクのせんせいも言ってたしなあ。でも「ユダヤ系エジプト人」にはさわってみたいかな。例えばこんなのとか:
お若いエジプト人映画監督が作成(中?)のドキュメンタリー・フィルム。1948年にイスラエルが建国されるまでは10万人(とも、8万人とも)のユダヤ系エジプト人がカイロやアレキサンドリアにコミュニティを作って住んでいたんだよ、っていう…、ナセル氏がエジプト国内のユダヤ系エジプト人を追い出したり国籍剥奪したりしてなければ、今頃はシオニズムに対する強力なカウンターになってたかも知れませんですね。皆が皆、嬉々としてイスラエルに移住してったわけでは無い。
でもそれは今からでも遅くないはずですね。何て言うんですかね。「アラブの春」というのが何か良いことをもたらすとしたら、それはこういうフィルムがおひさまの下で堂々と作られ、そして堂々と人口に膾炙してゆくことではないか。うーん。やっぱり読んでみようかな『アラブ革命の遺産』。でも社会主義と共産主義にはさわっちゃだめ!ってモスクのせんせいも言ってたしなあ。エジプトのユダヤ系マルクス主義者vsインド共産党毛沢東主義派だったら、どっちの方が強いかなあ。
現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ (岩波ブックレット)
ムバラク氏退陣までの約3週間の現地報告そして記録。あ、これ良いですね。なんかここまで、もろもろ「思い入れ」の強い感じの御本をめくっちゃったんでぐったりしちゃったんですけど。これ良いです。
中東戦記 ポスト9.11時代への政治的ガイド (講談社選書メチエ)
これ、直接「アラブの春」を扱ってるわけではなく2001年9月11日前後のアラブ諸国訪問記なんですけど、副題が「ポスト9.11時代への政治的ガイド」ってなってるし、「アラブの春」って「ポスト9.11」で合ってますよね、と思ってめくったのですが。訳注やら訳者コラムやらがやたらと凝っていて、なんだこれかっこいいな、と思って訳者の名前を見たらピカチュウ、なんだよサトシじゃないか!
ぜんぜん気付かなかった。うかつだったわー。
に、しても他の皆が皆そろいもそろって「おれのはなしをきけえ」となっているこのタイミングで、サトシは10年前の(それも学術書ではなく)紀行文を翻訳することをチョイスしてしまうのですね。何かもう言葉もないわ。かっこいいなあもう。
と、いうような周縁的な部分での興奮(と、一種の感動)は別として、本書そのものもとてもようござんした。時事的な情報源としてばかりではなく、正しくオーセンティックな「紀行文」として繰り返し堪能したいものがあります。
別のところに書いたのを、こちらに保存しました。