「イスラム・クイズ」

PCの中をごそごそ掃除していたら、ずいぶんと昔にとあるディスカッション・グループでまわってきた「イスラム・クイズ」が出てきました。なつかしい。全10問。

1. 「イスラム」という語を日本語に翻訳したら何になる?

2. 「ムスリム」という語を日本語に翻訳したら何になる?

3. 「コーラン」という語を日本語に翻訳したら何になる?

4. イスラムを実践していた預言者は誰ですか。

5. イスラムにおける第一の行は何か。コーランに従って述べよ。

6. ウドゥには何が必要とされているか。コーランに従って述べよ。

7. ハディースが書かれたのはいつ頃のことか、以下から選べ。
  – 預言者ムハンマド以前
  – 預言者ムハンマドの生存中
  – 彼の死後50年から100年後
  – 彼の死後100年から200年後
  – 彼の死後200年から300年後
  – 彼の死後300年から400年後
  – 彼の死後400年から500年後

8. 法的処置として正しいのはどちらか、コーランに従って以下から選べ。
  – 姦通/婚前性交渉に対する百回の鞭打刑
  – 姦通/婚前性交渉に対する石打による死刑

9. ユダヤ教徒、キリスト教徒は天国に入れるか?コーランに従って述べよ。

10. 「Allah」という語に最も近い日本語は?

以下、回答です。

1. 服従、降伏、承諾、準拠。「神に対して」と加えても正解。

2. 服従/降伏/承諾/準拠する者。「神に対して」と加えても正解。「イスラムの信者」でもいいが、半分減点。

3. 黙読または音読。研究、学習、解説としても正解。

4. 全員。

5. コーランには「イスラムにおける行」というコンセプトはない。

6. そもそも「ウドゥ」なるものはない。

7. 「100年から200年後」と回答した場合は半分正解。「200年後から300年後」と回答した場合は正解。更にハディースには複数あることを指摘できたら完全正解。

8. 百回の鞭打刑も石打による死刑もハディースに依拠したもの。

9. 入れる。

10. 神/神性。「神」とのみ回答した場合は半分減点。

ところでこの「イスラム・クイズ」のオリジナルは英語です。なので文中で「日本語」としてある箇所は元々は「英語」となっています。10年近く前にあるウェブサイトの中のひとの一人から受け取りました。Project Root List  という、「翻訳を経たコーランを読むということは、実際にはコーランではなく翻訳者自身の解釈を読むということであり、翻訳者自身の思想、経験、受けた教育、バイアス、不完全さを読むということである。故にこのサイトではコーランに出現する語彙の語根を網羅し学習者が自らその意味や用法を学ぶことを援助する」云々、というわけでコーランで使用されているアラビア語の語根をリスト化するからみんながんばって自習するんだ、というやさしいんだかきびしいんだかわかんないサイトです。

5の「行」というのは日本語でよく言われる「六信五行」の「五行」から拝借しましたが、英語だとこれは「五柱(Five Pillars)」です。時おり「Six Pillars of Faith and Five Pillars of Islam」という言い回しにも出会ったりしますが、「五柱(Five Pillars)」ほど頻繁ではありません。また10の「神/神性(God/Divine)」は「神/神的存在」とした方が正しいかもしれません。

翻訳者自身の解釈というのは確かにその通りなのですが、でもそれを言い出したらコーラン原典それ自体が「アラビア語に解釈された神の言葉」と言えなくもないのでは、などと思わなくもない(まわりくどい言い方)。ムハンマドは最後の預言者であると同時に最初の翻訳者であった。

わたしは「翻訳されたコーランはコーランではない」というのは、まあそれはある意味その通りですよね、と思います。併せて現代アラビア語非ネイティブはもちろんのこと、ネイティブでさえコーランのアラビア語は学習、すなわち誰かの思想や経験といった「バイアス」を経ることではじめて理解できるようになることも考慮に入れれば、この世にはコーランの原典を読んだ者はいない、ただし預言者ムハンマドを除いては。と、いうことになりそうですけどそれでいいですかね。いいですよね。

追記:音読は別腹、ということにしておいてもいい。
追記:と、いうか翻訳しちゃだめ!って言い出したのっていつごろのどこの誰なんだろう。9世紀くらいにはすでに翻訳が始まってるのだが。
追記:「コーランさえなけりゃアラビア語なんてとっくの昔に滅びてたのに……」と、いかにも苦々しいといった顔で言い放ったひとを一人知ってます。アズハルに留学して今はハディース研究やっていますが。