それから1年が過ぎました

Prince: every album rated – and ranked – Guardian

お亡くなりになって1年が経過しました。傷は癒えていません。ああ悲しい。ああ悲しい。ああ悲しい。1年前の、プリンスのアルバム全37枚、レート&ランク付けするよというガーディアン紙の記事。だいたい合っていますがわたしならベスト1はDirty Mindです。乗りかかった船なので以下、1位から10位を勝手に並べ替え。

1. Dirty Mind (1980年) これ、わたしレコードいまだに手放せずに持ってるんですよね。レコードプレーヤーは持っていないのに。”sister”と”head”がすごいです。”sister”の方は近親相姦の曲であるとか言うひとがいたり、歌詞にもそういう単語が出てきたりしていますけど、意味はそのレイヤー1枚きりではない。ここで言われているsisterというのは、黒人女性一般を指している語です。「ブラザー」とか「シスター」とかと呼び合っているあれです。それを踏まえてかいつまむと、こんな感じになります:

…I was only 16 and only half a man / My sister didn’t give a goddamn

「ぼくはたったの16歳で半人前 / ぼくのシスターは気にしもしない」。公民権運動から30年を経ても、一歩外へ出れば黒い男は半人前の扱いを受ける。けれど黒人の残り半分である黒い女たちは、それについてはおかまい無しに一人前の男としての義務を果たすよう黒い男に迫る。

…My sister never made love to anyone else but me / She’s the reason for my, uh, sexuality

「ぼくのシスターはぼく以外の誰とも寝たことがない / 僕のセクシュアリティは(僕自身のためにあるのではなく)彼女の所有物(だと思っているらしい)」。黒い男が黒い女以外と出歩くのを黒い女は極端に嫌う。黒い男は黒い女のために存在すると思っている(彼女たちの、黒くない男は黒い女を欲しがらないに違いない、という恐怖がそうさせる)。

「シスター」「ブラザー」と互いにリスペクトし合って平等にやっていく約束だったはずが、気がついたら「シスター」は「女」にジョブチェンジしていて「ブラザー」にも「男」であるよう迫ってくる。「男」としてまともな職につき、家計を支えろ。昼は外で働き、夜は性的に「女」を満足させろ。あれっ。せっかく奴隷の身分から解放されたと思ったら、何でまだこんな理不尽な命令されてるの。おれたちってシスターとブラザーじゃなかったんだっけ。ピープル・ユナイト!ですとかウィー・シャル・オーバーカム!ですとか、仲間を背中から撃つような真似はやめろ、今はより「大きな敵」と戦っているところなんだから的な、そういう空気がまだまだ濃厚に漂う中で黒い男や黒い女があえて口には出さずにいたことを口にした、言ってみれば内部告発の曲なわけです。

…I just want to be your friend

「僕はきみの友達になりたいだけなのに」。

“head”も”head”ですごい一曲なのですが、それはまた別の機会にめもすることにします。

2. Controversy (1981) ただひたすら”Do Me Baby”が収録されているからという理由で2位。

3. Purple Rain (1984) これは映画とセットで3位です。「えっ『パープル・レイン』?ふうん、まあいいけど」みたいな、売れたことが瑕瑾となるかのような、あまのじゃくっぽいことは申しません。わたしはプリンスを愛しているのであって、「プリンスを愛している自分を愛している」わけではないので(いや、まあ正直に言えば若干はそういう部分もありますけれど)。「まあいいけど」じゃねえ。いいものはいいだろうが。

4. 1999 (1982) リールレッコゥベッ ッチャチャ

5. The Black Album (1987/1994) これを5位に持ってくるのは、客観的には自分でもフェアではないと思います。でも一時期ものすごい繰り返し聴いてたんですよね……ああ、何もかもがなつかしい。

6. Sign O’ the Times (1987) これひどいですよね。1曲めでなんか世の中に蔓延する不穏、不安、このままでは世界はどうなるのか!みたいなこと歌って社会派ぶっておいて、その2曲めが「おひさまのしたであそぼう!」ですからね。

9. For You (1978) まあ言うてもデビュー・アルバムですから。

10. Graffiti Bridge (1990) ぜんぜんわるくないですよ。ぜんぜんわるくないですよ。question of U だけでも十分おつりがきますよ。

そして7-8. 2014年のPlectrumelectrum, Art Official Ageから2015年のHitnrun Phase 1&2

わたくしプリンスを愛してはいますが、↑の記事をながめても1、2回しか聴いてないのもあります。正直「そんなのあったっけ……」というのもあるし。Diamonds And Pearlsあたりはさすがに持ってますけど、でもやっぱりこうして見るとよく聴いていた=好きなのは80年代のプリンスなんですね。

あ、元気でやってるんだな、と思ったのが2012年のスーパーボウルのハーフタイム。なつかしいなー、って。それから2014年のアーセニオ・ホール・ショウ。いつでもどこでもピンヒールのお姿だったのが、かかと太めで先っぽもとがってない、ころんとしたブーツでの出演だったんですよね。「あ、年を取ってるんだ」と思いました。そこからなんとなく、プリンス再訪じゃないですけど聴き直しはじめた感じで。その矢先にこの世を去ってしまわれた。まだ何もおぼえていない。何もおぼえていないのに。ああ悲しい。ああ悲しい。ああ悲しい。プリンス、おうちにかえっちゃった。