そのいち:ビル・マヘルのトーク・ショウでベン・アフレックが「白馬の騎士」をやっているのを鑑賞しました。
ビル・マヘル「リベラルはリベラルの原則のために立ち上がるべき。言論の自由、信教の自由、男女の平等、同性愛者を含む少数者の権利、こうしたことのために立ち上がるべきなのに、ムスリム世界にこれらが欠けていることを指摘されると怒っちゃうんだよねリベラルは」
サム・ハリス「神権政治の話になるとリベラルは弱いよね。白人がやってる神権政治には怒るんだけどね、キリスト教のとかね。1984年に起きた、中絶手術をやってる産婦人科病院で起きた爆弾テロのこととか、未だに持ち出したりするし。なのにムスリムが相手だとリベラルは弱腰になる。どんな批判も『イスラモフォビア』の一言で済ませちゃうし」
ここでベン・アフレックが「イスラモフォビアが存在しないとでもいうのか!批判っていうけど、じゃあイスラムの何を知っているって言うんだ。対象をどれくらい知った上で批判しているんだ」「醜い、レイシズムだ、汚い、ユダヤ人差別と同じことの繰り返しだ」
割って入ったニコラス・クリストフ「いや、何かひとつだけもってきてそれで全体を語ろうっていうのはちょっとどうかとは思うよ、ジハーディとかいろいろいるのは確かだけど、そういうのに抵抗しているムスリムだっていっぱいいるよね?マララだってそうだし、モハメド・アリだってそうだし、イランには9年間と動くされっぱなしの活動家もいるし、こないだパキスタンで殺されちゃった活動家のこととか、」
ベン・アフレック「ステロタイプはよくない!」
ビル・マヘル「背教者は死刑にすべきと考えるムスリムは存在しないと?」
ベン・アフレック「ムスリム・マジョリティはそうは考えない!」
サム・ハリス「同心円で例えよう。中心がジハーディスト。この周囲にいるのがイスラミスト。これがだいたい全体の20%くらいかな」
ベン・アフレック「根拠は?」
サム・ハリス「いや、統計的に」
ベン・アフレック「どの統計?」
サム・ハリス「いろんな統計だよ(後述)。で、そのイスラミストの周囲にコンサバティブな人たちがいる。英国では78%のムスリムがオランダの漫画家(ムハンマド風刺画のときのひと)は死刑に処されるべきだと考えている」
ニコラス・クリストフ「いや、あの、過激なことを言うひともいれば、寛容なことを言うひともいて、」
サム・ハリス「いや、ジハーディストをフリンジととらえるのは間違っている」
黒いオトウサン「過激なことを言ういわゆるジハーディストたちのことしか見ていないと、それが全てと思い込んでしまいがち。でもそれは真実ではない。大きな声のジハーディストに抵抗しているひとたちも沢山いるし、声を上げている人たちもいるし、彼らをバックアップしていくプラットフォーム構築を」
ビル・マヘル「でもそのサイレント・マジョリティが何で声を上げないかと言えば要するにこわいからだろう?正しい宗教はたったひとつだとか言ってるマフィアみたいな連中に殺されるのが」
ベン・アフレック「違う。認めない。絶対アグリーできない」
サム・ハリス「ISISみたいなジハーディの犠牲者になってる人たちを助けないと」
ビル・マヘル「現実を見ろ。エジプトでは90%が背教者は死刑だって言ってる。それがメイン・ストリームなんだ」
ニコラス・クリストフ「いや、それをメイン・ストリームと呼ぶのはカリカチュアもいいとこ。インドネシアは?マレーシアは?世界中を見渡すべき」
サム・ハリスが「10億のムスリムが……」と言うのにかぶせてベン・アフレックが「15億!」とつっこんでるのがかわゆかった。
個人的には、黒いオトウサンの「やだなー、巻き込まれたく無いなー。おうち帰りたいなー。なーんでおれがベン・アフレックをなだめてんのかなー。これじゃあおれまるでモーガン・フリーマンみたいじゃない?ダニー・グローバーみたいじゃない?」みたいな表情がたまらん、などと思いながら視聴してたんですが、後でお名前を検索してみたらアフロ・アメリカンとして初めて共和党全国委員長を務めた人物でした。おつかれさまでした。
(後述)「いろんな統計」 まあ統計にもいろいろありますよね。例えばPEWなんかのここを見ると、
The World’s Muslims: Religion, Politics and Society
「強い指導者と民主主義なら?」という質問に対しアフリカ(サブ=サハラ)では72%が民主主義の方が好ましいと答えている。同時に、「信教の自由は良いことだと言える?」という質問にも80~90%が「言える」と答えていたりする。背教者云々、というのも確かあったと思うけど、眠いのでまた今度。
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そのに:サトシと山形浩生の対談を読んだらおもしろかったです。
サトシが「いわゆる宗教改革的なものを経ない限りムリだというのがおそらく共通認識ですね」と発言して「えー、宗教改革ですか」と突っ込まれたりしてる。突っ込まれたりして、「基本的にはムリだというのがこれまでの経験です(略)でも、我々は「変わってくれ」と言い続けるしかないと思います」と、なんかいろいろ長々と語っている。
さかのぼること12年前、『現代アラブの社会思想』のあとがきでいつか苦境を乗り越えた後のアラブの思想風景について書いてみたい、というようなことをサトシは書いていたわけですけど、わたしも読みたいのでがんばって下さいという思いを新たにしました。
ああ、言うまでもないですが山形氏の「えー、宗教改革ですか」っていう、何と申しますか、アニキ風のふかし方もかっこいいよねと思いました。
別のところに書いたのを、こちらに保存しました。
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